登米市の中学生の悩みはいつもシンプル
授業中生徒から、ふと、このような質問を受けました。

どうして大人はいつも勉強しろと言ってくるんですか。
「勉強しなさい!」
これは、大人が子どもによく言うセリフのひとつです。
でも、よく考えてみてください。
子どもが大人に向かって「勉強しなよ」と言う場面なんて、ほとんど見たことがありませんよね。
私自身も、子どもの頃はよく両親から「遊んでばかりいないで、たまには勉強しなさい」と言われたものです。
だけど当時の私は、聞こえないふりをしたり、何となく机に向かっても心ここにあらず…ということが多かったように思います。
大人たちも、本当はわかっているはずなんです。
「子どもに『勉強しなさい』と言っても、すぐには勉強しない」ということを。
それでも、どうして私たちはついこの言葉を口にしてしまうのでしょうか。
「勉強=将来のためになること」だと大人が信じているから
それでも、どうして私たちはついこの言葉を口にしてしまうのでしょうか。
それはきっと、「勉強=将来のためになること」だと大人が信じているからです。
子どものうちにしっかり学んでおけば、大人になって困らない。そう思うからこそ、つい口から出てしまうのかもしれません。
でも――
「じゃあ、大人は勉強してるの?」
そんな素朴な疑問を持つ中学生もいるかもしれません。
たしかに、社会に出て働いている大人たちは、毎日学校のように教科書を開いて勉強しているわけではありません。
宿題もなければテストもない。
だから、「大人はもう勉強してないじゃん」と思うのも無理はありません。
でも、ちょっと視点を変えてみましょう。
たとえば、仕事で新しいやり方を覚えたり、パソコンの操作を調べたり、資格を取るために本を読んだりしている大人はたくさんいます。
家計のやりくりを考えたり、子どもの教育について調べたり、健康のために運動や食事について学ぶ人もいます。
そう、大人の「勉強」は、子どもが思っているような“机に向かう勉強”とは少し違う形で続いているのです。
では、なぜ大人は子供に勉強しなさいというのか?
では、やっぱり気になるのはここです。
「なぜ大人は“勉強しなさい”って言うのか?」
大人だって、子ども時代に「勉強しなさい」と言われて嫌な気持ちになったことがあるはず。
それなのに、自分が親や先生の立場になると、つい同じ言葉を言ってしまう。
これは、大人が「勉強の大切さ」を身をもって知っているからこそなんです。
社会に出ると、思うようにいかないことがたくさんあります。
知識が足りなかったせいで苦労したり、もっと早く学んでおけばよかったと後悔したり…。
そういった経験から、「今のうちに勉強しておけば、将来きっと役に立つ」と本気で思っているのです。
そしてもうひとつ、少し切ないけれど大切な理由があります。
それは、“勉強している我が子の姿に安心したい”という気持ちです。
親にとって、子どもが机に向かって一生懸命に取り組んでいる姿は、とても頼もしく見えます。
「この子は大丈夫」「きっといい未来が待っている」と感じられるからです。
だからこそ、「勉強しなさい」という言葉の裏には、
「あなたの未来を思っているよ」という願いがこもっているのかもしれません。
大人は勉強しない?



私たちは毎日朝から学校でずっと勉強して、さらに塾で勉強しているのにもかかわらずいるのに、どうして親は勉強しないんですか
とはいえ
子どもの不満が止まりません。
「なんで毎日毎日、勉強しなきゃいけないの?」
「将来のためって言われても、今しんどいんだけど」
「どうせ大人だってスマホばっかり見てるじゃん」
…そんな声が聞こえてきそうです。
正直なところ、私も学生のころはそう思っていました。
未来のことなんてよくわからないし、いま目の前のゲームやSNSのほうがずっと楽しい。
友だちと話してる時間のほうが、生きてる実感がある。
「勉強しなさい」と言われるたびに、やる気はむしろ下がっていく。
そんな経験、きっと多くの人がしているのではないでしょうか。
ここで少し立ち止まって考えてみたいのは——
「勉強=ガマンするもの」になっていないか?ということです。
たしかに、勉強って楽しいことばかりじゃないし、ときには退屈で、しんどくて、わからなくてイライラすることもあります。
でも、少しだけ見方を変えるだけで、「勉強との付き合い方」は変わっていきます。
たとえば——
・全部を完璧にしようとせず、まずは得意なところから始めてみる
・10分だけと決めて机に向かい、終わったら好きなことをしてOKにする
・昨日の自分より少しだけ進めたら、それで上出来だと認めてあげる
勉強って、“やらされるもの”から“自分のためのもの”に変わったときに、ちょっとずつ楽になっていくんです。
大人の学習時間はかなり少ないという事実
でも——
ここまで読んで、「それでもやっぱり納得できない」と思う人もいるかもしれません。
「大人だって勉強しないじゃん!」
実は…そのとおりなんです。
文部科学省の調査によると、日本の大人の学習時間は、先進国の中でもかなり少ないという結果が出ています。
たとえば、スウェーデンやフィンランド、ドイツなどの国々では、社会人になっても何かしらの学びを続けている人が多くいます。
でも日本では、仕事が忙しい、家庭がある、時間がない、疲れている…。
そんな理由で、大人が自主的に勉強する割合はとても低いのです。
中には「社会人になったらもう勉強しなくてもいい」と思っている人さえいます。
つまり、「勉強しなさい」と言っている大人自身が、勉強から離れてしまっている現実があるんです。
これはちょっと残念なことでもありますし、
同時に「じゃあ本当に勉強って必要なの?」という問いを改めて考えるきっかけにもなります。
だからこそ子どものうちに“勉強の意味”を知ることが大事
とはいえ、そんな大人の姿を見て、「じゃあやっぱり勉強なんてしなくていいんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。
でも、ここでひとつだけ伝えたいことがあります。
子どものうちに勉強と向き合える時間というのは、実はとても貴重なものです。
大人になると、やらなきゃいけないことがたくさん増えて、
「本当は勉強したいけど、今は無理…」という状況が当たり前になってしまうからです。
だからこそ、時間があって、好奇心があって、自由に学べる今この瞬間に、
「なぜ勉強するのか?」
「自分はどんなことにワクワクするのか?」
そんな問いを持つこと自体が、大きな意味を持つのです。
点数や成績ももちろん大事かもしれません。
でも、それ以上に大切なのは、「学ぶって楽しいかも」「知るっておもしろいかも」と、自分の中に小さな“気づき”を見つけていくこと。
それが、将来どんな道に進んでも、「学び続ける力」になります。
そしてその力こそが、自分の人生を切り拓いていく、最大の武器になるのです。