登米市の塾の塾長が久しぶりの外泊で感じたこと

坊主頭とご利益と―久しぶりの外泊で感じたこと

土曜日。久しぶりに病院から外泊の許可をいただきました。
「よし、塾に顔を出そう」そう決めたものの、心のどこかに小さな不安が芽生えていました。

しばらく現場を離れていたことで、
「生徒たちはまだ塾長のことを覚えてくれているだろうか」
「保護者の皆さまと自然にお話しできるだろうか」
そんな迷いが頭をよぎったのです。

外泊といっても、体はまだ完全ではありません。ましてや教育の現場は常に動いている。私がいなくても授業は進み、生徒たちもそれぞれの時間を過ごしてきたはずです。だからこそ、ほんの少しですが「自分はもう必要とされていないのではないか」と思う瞬間さえありました。

その不安が一気に消えた瞬間

しかし、その不安は教室に足を踏み入れた瞬間に一気に吹き飛びました。

「塾長!」

笑顔で駆け寄ってくる生徒たちの声。
「お体、大丈夫ですか?」と優しく声をかけてくださる保護者の皆さまの言葉。

その場の空気は、まるで大きな家族の輪に戻ってきたようでした。胸の奥までじんわりと温まり、「あぁ、自分の居場所はここにある」と心から思えました。

特に印象的だったのは、授業の日ではなかったのに「塾長の顔を見に来ました!」とわざわざ立ち寄ってくれた生徒がいたことです。ほんの数分の会話でしたが、その一言には計り知れない力をもらいました。
「自分は必要とされている」― それを深く実感できた瞬間でした。

坊主頭と“ご利益”

そして極めつけは、私の姿を見た生徒の反応です。

入院生活で髪を整える機会もなく、思い切って丸刈りにしてしまった結果、見事にピカピカの坊主頭になっていました。照明に反射して光るその頭を見て、生徒が突然、両手を合わせて拝み始めたのです。

「塾長にご利益がありますように!」

思わず吹き出してしまいました。
「いやいや、私は仏像でも神様でもないぞ」と心の中でツッコミを入れながらも、その無邪気さに救われました。

周囲の生徒たちも大爆笑。「塾長、合格祈願で頭を触らせてください!」と冗談を飛ばす子まで現れ、あっという間に教室が笑顔でいっぱいになりました。
まさか自分の坊主頭が、ここまで生徒たちを盛り上げるネタになるとは想像もしませんでした。

けれど、笑い声に包まれながら、私は思いました。
「こんなふうに心の底から迎えてくれる存在がいるのだ」と。
髪の毛はなくなっても、心の中には確かな温かさが積もっていくようでした。

生徒・保護者からの差し入れの山に込められた思い

その日の机の上には、保護者の皆さまからいただいた差し入れがずらりと並びました。

「塾長、甘いもの食べて元気出してください」
「これ、子どもが自分で選んだんです」

チョコレートにお菓子、栄養ドリンクまで揃い、まるで小さな売店のよう。袋を開けるたびに温かい気持ちがあふれてきました。
中には「これでスタミナを!」と渡された大袋のスナック菓子もあり、「いや、これはむしろ病院で怒られるやつでは…?」と心の中で突っ込んでしまいました。

それでも、どんな差し入れにも「塾長に元気でいてほしい」という気持ちが込められていることは一目瞭然でした。ひとつひとつに感謝の思いを抱きながら、改めて支えられていることを強く実感しました。

今までの塾での生活と日常は変わらなかった

久しぶりに教室を歩き回ると、生徒たちは相変わらずでした。

真剣に問題に取り組む子、机に突っ伏してうとうとする子、友達と小声で盛り上がる子。
そんな姿を見て「変わらない日常」があることに、心底ホッとしました。

正直言葉で表現するのは難しいですがとにかくこれこれ、この感じでしょ。っといった感じ。

ある生徒は「塾長いない間に頑張りました!」と誇らしげにノートを見せてくれましたが、中身は誤字脱字のオンパレード。思わず「努力の方向性が惜しい!」とツッコミを入れると、周りの生徒たちが大笑い。その笑い声に包まれ、「やっぱりこの場所が好きだ」と改めて感じました。

今回の外泊で気づいたこと

今回の外泊は、ただの休養ではありませんでした。
それは私にとって、大切な気づきを与えてくれる時間になりました。

普段は「塾長」と呼ばれ、指導する立場に立っています。けれど、この日ばかりは逆でした。
生徒の笑顔に励まされ、保護者の優しい言葉に支えられ、差し入れの一つひとつに元気をもらいました。

「僕は生徒たちに必要とされている」
「保護者の皆さまに見守られている」


そう実感できたことが、何よりの力になりました。

そして、この塾は子どもたちにとってだけでなく、私自身にとってもかけがえのない居場所なのだと改めて強く感じました。